2016年6月30日木曜日

院内感染対策と設計デザイン           人とモノの関係性について

 院内感染(医療関連感染)対策にデザインは欠かせません。ただここでお話したいのは、もっとオシャレにしようという見た目の話ではありません。人(医療従事者)とモノ(感染予防製品や環境)の関係性を注意深く観察し、「行為につながるデザイン」が重要だということを少し考察してみたいと思います。

Keywords ; アフォーダンス、人とモノの関係性、デザイン、UXデザイン、手指衛生、個人防護具PPE、教育、人間工学

感染対策とアフォーダンス
 アフォーダンスとは元々、米国の生態心理学者のJames Jerome Gibsonが提唱した造語であり、解釈はちょと複雑ですが、簡単に言うと「動物とモノの間に存在する行為についての関係性」のこと。例えば、医療施設では、医療従事者とアルコール製剤のディスペンサーとの両者の間に「手指を消毒する」というアフォーダンスが存在します。あるいは「アルコール製剤のディスペンサーが手指を消毒するという行為をアフォードする。」と表現します。逆にいくら優れた消毒効果を持つ製剤であっても、そのディスペンサーで「手指を消毒する」という行為ができなければ、そこに「関係性」は存在せず、アフォーダンスはないということになります。
 昨今の医療施設における手指衛生剤やPPEのディスペンサーと医療従事者との間には、アフォーダンスは本当に存在しているでしょうか?携帯型の手指衛生剤も多く出回っていますが、携帯すると便利という発想が、手指を消毒するという行為を本当にアフォードしているでしょうか?
 
■教育だけで手指衛生は向上できるか?  
 院内感染対策の向上に「教育」は欠かせませんが、「教育だけ」でそれらの向上を図るには限界があると考えています。これまで手指衛生や個人防護具PPEの遵守に関しては、医療従事者個人の問題として「教育」が重視され、規律の強化や監視とも言える手法も取られてきましたが、ディスペンサー等の病院環境と医療従事者の「関係性」に関しては、これまで十分な議論がなされてきたとは思えません。ここでいう「関係性」とは、操作感や使いやすさといった「ユーザーインターフェイス」や「ユーザビリティ」のことだけではなく、医療従事者の一連のケア・プロセスの中で自然に、極端な話、無意識でもその行動をとるといった視点、知覚でディスペンサーや病院環境がデザインされているかどうかという、もっと包括的な状況を指します。

 手指衛生やPPEが適切にできない理由に、個人の知識不足やモラルの欠如、さらには育った環境や生活習慣まで様々な要因が指摘されています。その結果、「教育」が最重視されるのは当然ですが、上記にあるように、人だけでなく、モノ(環境)とその関係性を深く読み解けば、違う切り口による解決策が生まれるかもしれません。現在の施設環境はこれまでの慣習や作業効率が優先され、感染予防の行為を促すようなデザインを考慮に入れていない可能性が高く、特に手指衛生やPPEのディスペンサーに関しては、上記のような検証がなされてきたとは言えません。

■デザイン視点は、感染対策に必須
 デザインは数値化できない感性に関わる部分でもありますが、思わず目を引く、興味が湧く、触ってみたくなるといった感覚に訴える要素は重要な性能の一つであり、ここでの医療従事者と環境との関係性は、感染対策の遵守率に影響を与える可能性があります。識別しやすくする意味で、ディスペンサー等の「色」や「位置・高さ」の選択も重要です。周囲環境との調和も大切ですが、その結果、識別しにくくなっている場合が多々見受けられます。あえて、調和を乱す色を選択する、邪魔になる場所に設置するという選択肢も、感染対策という目的からすれば、「有り」かもしれません。
ディスペンサーの「デザイン」、「色」、「場所」、「高さ」が遵守率に影響を及ぼしている 可能性がある。

■感染対策(手指衛生、個人防護具PPE)は業務プロセスとして捉えられているか?
 また、人やモノの関係性だけでなく、感染対策(手指衛生、PPE)は業務プロセスの中で、メインの業務の一つとして本当に捉えられているでしょうか。医療従事者の業務は専門職によってそれぞれですが、感染対策は自分たちのメインの業務ではなく、場合によってはメインの業務を遅める、妨げる面倒な作業と深層心理で認識されている可能性はないでしょうか。
 医療施設における業務は通常、複雑で連続するプロセスとして発生しているので、業務同士の「関係性」がここでも重要になります。人間工学(ヒューマン・ファクター)的にも、業務の関連づけに支障があるとその業務は孤立し、孤立した業務は本来の業務として重視されず、スキップされる可能性が高くなるといいます。
 既存の業務に手指衛生等の感染対策を無理やり挿入していくのではなく、感染対策の視点から各職種ごとの業務プロセスをあらためて見直すという捉え方も、本末転倒と思われるかもしれませんが、患者さんの安全を守るという真の目的からすれば、検討すべき課題だと考えます。

■終わりに
 感染対策のアフォーダンスも業務プロセスの見直しも最初にやるべきことは、「観察」ではないでしょうか。行動科学の観点からも、施設環境やデザインの影響で、医療従事者が無意識で手指衛生しないことを選択している可能性もあります。
 「観察」は「ラウンド」とは異なります。感染対策責任者は、監視・指導者としてではなく、フラットな視点でつぶさにありのままの行動や環境を長時間観察することによって、現場の医療従事者が意識しないで行っている行動、顕著化していない意識など、現場担当者が言葉では語れない要素を抽出できるかもしれません。遵守率が上がらないのは、個人の責任だけでなく、環境やデザインに起因する可能性があることを管理者は常に意識する必要があると思います。

「デザイン vs UXデザイン」 人間の行動を理解するデザインが感染予防にも必須。
jpeg by Life moves pretty fast

 私たちモレーンは、感染予防対策の課題に対して、その問題は何なのか?これまでの常識に囚われず、その問題を捉え直し、新たな切り口によってより良い解決策はないのかといつも考えています。当事者意識のセンサー感度を最大限にして現場を深く観察させていただき、ご担当者と議論を重ね、仮説を立てて、検証、計測のフィードバック・ループを回していく。

 今回は少し真面目なポストとなりましたが、我々の考え方にご興味を持っていただける医療施設の方がいらっしゃいましたらぜひ、ご一報ください。新しい何かをご一緒に発見できたら素晴らしいですね。

参考文献;
1)デザインの生態学 後藤武・佐々木正人・深澤直人著 東京書籍
2)Hand Hygiene and Human Factors / Systems Engineering
     Carla J. Alvardo, University of Wisconsin-Madison
 


2016年4月25日月曜日

熊本地震・感染対策予防支援

 

熊本での震災を受け、モレーンでは東日本大震災以来のMDAT(Moraine Disaster Assitance Team)の出動となり、熊本での感染対策予防支援を開始しました。
 
 被災地の感染管理認定看護師の方々からの直接のご要請を受けて避難所におけるノロウィルス対策に焦点を絞り、ピンポイントで感染予防製品を現場に直接お届けしました。

 今回は福岡の九州支社がMDAT本部となり、3.5tトラックにPPE(個人防護具:グローブ、マスク、エプロン、ガウン)、ノロウィルス対応環境消毒ワイプ、ハイジーバッグ(水を使用しない吸収ポリマー・トイレバッグ)等を積載し熊本の被災地に向かいました。
 当社の川崎物流センターから物資を出荷し、九州地区における当社のエンジニアリング協力会社である、株式会社アイティーイー(本社:福岡、代表:竹内一生様)ご協力の元、3.5tトラックに積み替え熊本の被災地を目指しました。


アイティーイーの皆さんが、全社をあげて救援物資出荷のお手伝いをしてくれました。本当に感謝!


 被災地ではPPE(個人防護具)の着脱手法や水を使用しない環境衛生手法のご説明等も同時に実施しました。
最初の支援先、熊本赤十字病院。今回の災害支援の拠点となります。





水のいらない高分子吸収ポリマーのトイレバッグ、ハイジー。
ノロウィルス対応の環境清拭用ワイプ、クリネル・ユニバーサル

プラスチック・エプロンの着脱を説明する原田九州支社長
 今回は日本環境感染学会の災害時感染制御支援チームとして岩手から特殊トレーラー(!)で現地入りされていた岩手医大、櫻井教授チームとも連携させていただき、日本環境感染学会推奨品として感染制御製品のご提供もさせていただきました。学会推奨物資としてトラックを走らせたので、通行止めとなっていた高速道路の通行許可やピンポイントでの保健所での受け入れ対応等、一企業では決してできないご支援も可能となりました。
 学会の偉大さとともに夜を徹して片道1000kmを超える運転で現地入りされている櫻井先生チームの使命感に深く感服した次第です。

パーキングエリアで合流した櫻井先生率いる日本環境感染学会の感染制御チームにはテレビ局の密着取材が!
学会推奨品の証。このステッカーのおかげで、迅速に被災地に物資をお届けできました。

 その後も引き続き、被災地で活躍されている感染制御の専門家との個人的なつながりを通じて、県庁や避難所をサポートされている医療施設へのピンポイントの物資支援は続いています(28日には第2便が出発します)。一企業が出来ることには限りがあり、微力かもしれませんが、被災地で家を失われた方々が、感染の恐怖に怯えることはあってはならないと強く思っています。全社員一丸となって引き続きこの災害に立ち向かっていきます。

2016年4月12日火曜日

千鳥ヶ淵 桜の花びら

 すっかり桜も終わりですが、散った花びらも美しい。

 満開も素晴らしいですが、今の千鳥ヶ淵がいいと感じる自分は歳をとったのかな。





2016年4月1日金曜日

2016年度 新卒者入社式

 今日は新入社員の入社式でした。
 入社式は東京本部で行われましたが、北海道、名古屋、大阪、福岡、川崎ラボの各拠点をテレビ会議システムで中継、同時配信しました。

 毎年この日は身が引き締まる日。星の数ほどある会社の中から社会人のスタートアップにモレーンを選んでくれてありがとう!絶対に後悔はさせないよ。

今年の入社式。先輩社員からの励ましの言葉が続きました。若手も成長したなと実感する瞬間でもあります。

会社近くの神田川。夜桜になりましたが、今年も満開です。左奥の高層ビルにモレーンはあります。

2016年3月31日木曜日

2017年度 新卒会社説明会

 今日は第1回2017年度の新卒会社説明会。当社のセミナールーム「ダーウィン」で開催しました。
 まだ、今年の新卒も入ってきてないのに...。この仕組みでの新卒採用には、やはりちょっと違和感が。そろそろ別の新しい手法をトライする段階かもしれません。

 今回の新卒会社説明会では、入社2〜3年目の若手社員が企業プレゼンや上司抜きのホンネ座談会(笑)を企画し、学生さんたちには好評だったようです。我々管理職の人間は、ホンネ座談会ではこの部屋から締め出されてしまいました笑。

 私自身も社長として「モレーンの価値」というタイトルで学生の皆さんに直接お話しをしました。この中で、モレーンが求める人財は?との質問が多くあったので、「会社が自分の成長のために何かをしてくれると思ってる人はいらない。会社を利用して人のために何かをしたいと思ってる人が欲しい。」と答えました。
 ちょっと引いてる人もいたかも...大丈夫かな笑。

*学生の皆様へ、
 大企業のような充実した教育プログラムはないかもしれません。ただ、これだけは言えます。1年も経たない早い段階から大小、多くのチャンスをご用意します。社会人の成長は知識だけでなく、いかに早く多くの経験を積むかに左右されるのです。本当の成長は与えられるものではありません。チャンスをモノにし、積むのです。
 社会では人は育てられるのではなく、仕事の経験によって自ら育ちます。もちろん、私も含め、先輩社員たちが全力で支えますので、心配はいりません。日本、そして世界を舞台に自分を試してみたいと考えている皆さんを心からお待ちしています。

若手社員によるホンネ座談会。写真を撮ったら、社員に出てってくださいと怒られました。



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