アスペルギルス感染対策 病院新築・改修工事の感染リスク

 
杉山北海道支社長によるアスペルギルス感染対策

 今日は札幌。大規模な新築・解体工事を予定されている医療施設で行われた北海道の杉山支社長によるプレゼンテーション、「病院新築改修工事におけるアスペルギルス感染対策」に同行しました。

 アスペルギルス感染症の感染経路はアスペルギルス胞子の吸入ですが、胞子はあらゆる環境中に常在し、特に院内の解体や改修・補修工事により生じる粉塵中には大量のアスペルギルス胞子が含まれるため、感染のリスクが一段と高まります。実際、アスペルギルス感染症の原因の66.1%が院内の改修工事や空調メンテナンスの不備にあるとの報告もあります。*

 この感染リスクに対して、国内外のガイドライン**でもその対策を強く勧告しており、その中で具体的な対策を決定するための評価ツール「インフェクションコントロール・リスクアセスメント(Infection Control Risk Assessment : ICRAイクラ)」***の実施も要求されています。ただ、残念ながら国内での認知度はまだ低く、実施も限定的なので、さらなる普及・啓発活動が必要、我々の努力も不十分であると考えています。

 今回の企画は、同施設の感染制御部の方々のリーダーシップにより、施設管理部、行政、建築工事会社のそれぞれの担当者に出席いただき実現しました。杉山支社長のプレゼンの後、参加者によるディスカッションとなり、途中揉めたりもしましたが(笑)、チームの目的は易感染患者をアスペルギルス胞子から守ること。このベクトルがそろえば、色々な課題も必ず解決できると確信します。
 通常、院内の改修工事や空調メンテナンスは施設・管理部門の範疇となるため、ICRA(イクラ)の運用は、感染制御チームが施設・管理部門をいかに巻き込むかが、カギとなります。
 通常のICRAの流れでは、施設・管理部門が1)作業工事内容を分類(A~Dタイプ)。2)作業場所を患者のリスクグループで分類(低・中・高・最高リスク)。3)1)と2)で抽出した条件を評価表と照らし合わせてリスクのクラスを決定(クラスⅠ〜Ⅳ)。4)決定されたリスクのクラスがⅢもしくはⅣに該当する場合(感染リスクが高い)は、その工事に感染制御部門の承認が必要。5)クラス分類に応じた感染予防策を実施。となります。
 ICRAは感染制御部門の承認、監督の元、施設・管理部門が主体となり、必要に応じて工事事業者へのトレーニングや立ち入り許可証、工事許可証を発行します。この許可証を現場に掲示しない限り、医療施設内での一切の工事、メンテナンスは実施できないという厳格なルールも必須となります。



* Vonberg RP, Gastmeier P, Nosocomial aspergillosis in outbreak settings.
  J Hosp Infect 2006 Jul;63(3):246-54

** ガイドライン;
 1)「医療施設における環境感染管理のためのCDCガイドライン2003年」
 医療施設での取り壊し、修復等の過程において感染予防従事者が積極的に関与し、リスクアセスメントや隔離維持の監視及び記録をすべきであると勧告。 さらに、「感染管理リスクアセスメント(ICRA・イクラ)」を実施することを強く支持。 

 2)「病院感染対策ガイドライン改訂版(第3版)
   国立大学附属病院感染対策協議会編 2012年4月」
 病院工事中はアスペルギルス感染の危険が高まるため、感染管理リスクアセスメント(Infection Control Risk Assessment : ICRA)を行うことが望まれる。推奨レベル:A-1(最高レベル) 


*** ICRA (Infection Control Risk Assessment:イクラ)
 医療施設の改修工事やメンテナンス時に発生する塵埃からの医療関連感染を予防する対策を決定するための評価ツール。
 工事の内容や規模、場所(患者)のリスクを評価し、具体的な対策を決定、監視し記録
することが要求されている。
*CDC(米国疾病予防管理センター)、APIC(米国感染予防専門家協会)、AIA(米国建築家協会)、ASHE(米国ヘルスケア・エンジニア学会)でその実施が勧告され、国際医療認定JCI(ジョイント・コミッション・インターナショナル)においても全ての認定医療機関に対し、その実施が認定要件になっている。

※アスペルギルス感染対策のセミナーや、ICRAに関してのトレーニングプログラムや許可証、チェックリスト等の詳細の資料をご用意しています。お気軽にお問い合わせ下さい。


 
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